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【Non-Disclosure Agreement】Confidential Informationの定義はどう定めるべきか。

 この記事では、Non-Disclosure Agreement(NDA)における秘密情報(Confidential Information)の定義について、弁護士が具体的な条項例(サンプル)を用いて分かりやすく解説しています。この記事を読めば、情報を開示する側、受領する側それぞれの立場から、どのようにConfidential Informationの定義を書けばよいかが分かります。

 NDAの審査は、慣れてくると一日に何通も処理できるようになってきますが、だからといって、簡単な業務というわけではありません。

 たとえば、Confidential Informationの定義一つをとってみても、検討すべき事項は多々あります。

  • 開示した情報はすべてConfidential Informationであると定めてもよいのか?
  • Confidential と表示したものに限定すべきか?
  • 口頭で開示した情報はどうするか?
  • Confidential Informationの内容を具体的に列挙したほうがよいのか?

 そこで、本記事では、Confidential Informationの定義に関して検討すべきポイントについて解説します。

 包括的な定義規定の課題 

 まず、以下の定義条項をご覧ください。

Confidential Information means any information disclosed to the recipient party(the “Receiving Party”) by the disclosing party (the “Disclosing Party”) either directly or indirectly, in writing, orally or by inspection of tangible objects, including without limitation, business plans, documents, prototypes and/or samples. (山本孝夫 英文ビジネス契約フォーム大辞典 p57より)

 この定義の良いところは、秘密であると表示しなくても、また、口頭で開示した情報であっても、広くConfidential Informationに含まれるため、相手方よりも多くの秘密情報を開示することを予定している当事者としては、一定の安心感が得られる点にあります。

 一方、主として相手方から秘密情報の開示を受ける立場の当事者にとっては、このような定義では、相手から受け取った情報をすべて秘密情報として取り扱わなければならず、情報管理を適切に実施することが極めて困難になるというデメリットがあります。

 

 Confidential表示を必要とする定義条項 

 そこで、情報管理の観点から、Confidentialと表示されたもののみをConfidential Informationとして取扱うNDAもよく見られます。その場合のConfidential Informationの定義条項の一例としては、以下のような文言が考えられます。

条項例(サンプル)

“Confidential Information” means any information disclosed or made available by one Party to the other Party, provided, however, that the information disclosed in writing or any tangible form shall be clearly marked as “Confidential” or any other similar indications, and the information disclosed orally, visually or in any other intangible form shall be reduced to writing or any other tangible form and clearly marked as “Confidential” or any other similar indications within fourteen (14) days from such disclosure, in order to be deemed Confidential Information.

 なお、口頭で秘密管理意思を伝えただけでは、後日、そのような意思の表示があったかどうか立証することが難しくなりますので、こちらの条項例では、口頭又は視覚的に開示した情報については、開示日から14日以内に文書などの形式に要約し、そこにConfidentialの表示をすることも要求しています。

上記の文言は情報管理が容易になるという意味で情報の受領者にとって有利な文言ですが、他方、情報の開示者としては、Confidentialの表示をつけることを徹底できるかという点について、慎重に判断する必要があります。特に、M&Aにおける会社の売主側の場合には、大量の情報を開示する必要がありますので、Confidentialの表示を徹底することは容易ではないように思われます。

 Confidential Informationの内容を具体的に列挙した方がよいのか。 

一方、より具体的に、Confidential Informationの内容を列挙するケースもよくあります。下記はその一例です。

条項例(サンプル)

Confidential Information” means all non-public, confidential, or proprietary information disclosed by either Party (a “Disclosing Party“) to the other Party (a “Recipient“) including, without limitation, unpatented inventions, ideas, method, discoveries, know-how, technical data, trade secrets, designs, images, specifications, protocols,(以下省略). 

条項例の前半の部分で、当事者が開示した秘密性のあるすべての情報はConfidential Informationに該当すると定めるのであれば、下線部の例示列挙は不要なようにも思われます。しかし、実際に裁判の場になれば、問題となった情報が開示者の秘密情報に含まれるのかが争いとなり、秘密情報の範囲が限定的に解釈される可能性もありますので、秘密情報を具体的に列挙しておくことはそのような争いを防止する効果があります。また、秘密情報の漏洩があった場合、漏洩事件を起こした当事者は、「その情報が秘密情報だとは思わなかった」と言い訳をする可能性もありますが、このようにNDA上において秘密情報を具体的に列挙しておければ、そのような言い訳を防ぐこともできます。

もっとも、このようにNDA上で秘密情報の内容を列挙してしまうと、列挙されていないものはConfidential Informationには含まれないという解釈が一応可能になってしまい、かえって自社にとって、不利な結果になってしまうおそれもあります。したがって、このような文言は、開示がする情報が予め想定できる場合に用いるのがよろしいかと思われます。

 

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