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発明をしたらどうすべきか(3)

1 特許出願や特許化にはコストがかかること
特許出願して、特許権を維持するためには、様々な費用がかかります。
まず、特許出願するには、特許庁に納める手数料が1件につき1万6000円かかります。それだけではなく、通常は弁理士などに出願書類の作成を依頼したり出願手続きを任せたりしますので、その費用として30万円程度かかります。
また、出願後3年以内に特許庁に審査請求しなければなりませんが、これには最低14万2000円かかります。審査請求をすると、多くの場合、特許庁から拒絶理由通知が来るため、それに対する意見書や補正書の作成を弁理士などに依頼することになり、この費用として10万円以上かかります。
さらに、めでたく特許となると、通常は弁理士などの成功報酬が10万円程度かかります。また、特許権を維持するための特許料も発生します。特許料は、平成16年(2004年)4月1日以降に審査請求をした出願については、従来よりも減額されていますが、それでも10年目以降は毎年最低5万9700円かかります。
そうすると、仮に出願5年目で特許が登録となりその後15年間特許権を維持したとすると、費用の合計は100万円を超えます。

2 他人に発明のヒントを与えること
特許出願すると発明が公開されますから、その発明を他人が模倣したり、それを基にした発明のヒントを他人に与えてしまったりします。しかし、特許制度の根幹は、特許発明を公開する代償、つまり他人が特許発明を土台にしてさらなる発明をできる状態にする代償として、一定期間の特許発明実施を独占させることにありますから、特許出願をして特許権の取得を目指す限り、このデメリットを避ける方法はありません。
なお、中には、他人に知られたくないため、特許出願の明細書に発明実施に必要な要素をぼかして記載したりあえて省略したりする場合があるという話も耳にします。しかし、そのような特許出願は、無効(特許法36条4項1号違反)です。したがって、きちんと特許権を取得しようとすると、特許出願の明細書には、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明の内容を記載」(同号)しなければなりません。
そうすると、前述のとおり、他人が特許発明をヒントに別の発明や改良発明をしてしまうおそれがあります。

3 特許出願のデメリットに対する考え方
以上のとおり、特許出願をする場合のデメリットとしては、費用がかかることと、他人が特許発明を模倣したり、特許発明をヒントに別の発明や改良発明をしてしまう可能性があることが挙げられます。このような特許出願のデメリットに対する考え方としては以下のものがあります。
まず、費用については、その特許権を他人にライセンスすることができれば、回収できる可能性があります。また、ライセンスできなくとも、特許権を持つことで他人の模倣を防止して自分のビジネスを守ることができるというのであれば、費用をかける価値がある可能性が高くなります。
さらに、他人の模倣の可能性については、きちんと特許権が得られるのであれば、特許権に基づく差止請求権、損害賠償請求権の存在により一定程度抑止されると考えられます。
一方、特許出願することで発明の内容が公開され、それを基に他人が別の発明や改良発明をしてしまうことを防ぐことができません。それを防ごうとすると、特許出願をせず、社内でノウハウとして秘密管理するほかありません。

4 特許化とノウハウの秘密管理との選択における考慮要素
重要な発明であればあるほど,特許化するか,ノウハウとして秘密に管理するかは、その選択が難しくなります。
従来,この選択にあたっては,その発明を特許化したときの侵害行為の特定容易性が重視されていました。しかし,昨今の法整備の状況等を踏まえると,必ずしも,侵害行為の特定容易性を重視しなくてもよいのではないかと筆者は考えます。
そこで,次回以降,新たな発明をした場合に,その発明を特許化するか,ノウハウとして秘密管理するかの選択における考慮要素について述べることにします。(弁護士 中野博之)