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発明をしたらどうすべきか(2)

1 最初に出願をした者に特許権が与えられる

特許権は、最初に特許出願をした人に与えられます。この方式を先願主義といいます。ここでのポイント(Point2)は、最初に発明をした人に与えられるわけではなく、最初に特許出願をした人に与えられることです。

一方、かつて私が企業で研究していた時には、先発明主義、つまり最初に発明をした人に特許権を与える制度を採っている国がありました。特に、世界最大の経済大国アメリカが先発明主義でしたので、アメリカで特許を取りやすくするため、実験ノート(日々の研究の経過を記録するノート)に研究の成果を記載する際に、研究者自身の日付とサインとともに、その内容を別の社員に確認してもらい、確認した人の日付とサインも毎回記載して、発明した日付を確実に立証できるよう工夫していました。

しかし、現在では、アメリカも最初に特許出願をした人に特許権を与える先願主義になりました。日本も、戦前から先願主義です。

 

2 早期に特許出願するメリット

先願主義のもとで、早期に特許出願をするメリットは、当然のことながら、特許権を取得できる可能性が高まることです。しかし、早期に特許出願するメリットはこれだけではありません。

特許法は、特許出願前に公然知られた(公知)発明は、特許を取得できない旨定めています。そして、特許出願をすれば、原則として出願の日から1年6月が経過すれば、出願の内容が公開され、公知となります。

そうすると、たとえ自ら出願した特許につき何らかの事情で権利化を諦めても、出願公開による公知化さえ経ておけば、その後その発明については誰も特許権を取得できないことになります。前回述べたとおり(Point1)、重要なのは、あなたがそのビジネスに関する特許権を持っているかどうかではなく、あなたが行おうとすることが他人の特許権を侵害していないかどうかという点ですから、他人が特許権を取得できないということは、あなたがその技術を安心して使えるということになります。

このように、早期に特許出願をするメリットは、早期に出願内容が公開され公知化することで、その後の他人の出願を排除できるという点にもあります。

 

3 全ての発明をできるだけ早く特許出願するのもひとつの方法

以上のような理由から、全ての発明をできるだけ早く特許出願するのもひとつの方法です。仮に、その発明をどうしても他人に知られたくなく自社のノウハウとして秘匿しておきたい場合には、出願公開がされる前に出願を取り下げることで、出願公開を防ぐことが可能です(公開公報の発行準備がなされるまでに取り下げる必要があります)。つまり、(出願の約1年4月後と言われている)公開公報の発行準備がなされるまで、その技術を公開して特許権を得る(仮に特許権が得られなくても他人が特許化することは少なくとも防止できる)のか、取り下げてノウハウとして秘匿するのかを選択する猶予期間が与えられるということになります。

一方、すぐにでも公知化してその後の他人の特許出願による権利化を防ぎたいという場合、出願公開の請求という制度を用いれば、出願後1年6月を待たずとも出願公開され、特許出願の発明の内容を公開をすることができます。(弁護士 中野博之)

 

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